犯罪小説

 島田荘司さんの御手洗潔シリーズといえば、ジャンルは推理小説になると思いますが、本作は謎解きではなく、犯罪に至る人物達の物語。

 前半、素人でも考える方法が自然火災の原因と早々に結論され、突然野球少年の話(自叙伝)に移った時はとまどいを覚えましたが、確かな筆力で書かれた一人の人間の半生は説得力もありながら球界という日常生活とは少し離れた世界にわくわくし、どんどん読み進めることができました。

 後半で最初の火災と野球少年だった彼とタイトルが見事にまとまり、また、島田さんならではの現代社会の問題点を突きつけたメッセージ性の強い秀作です。